【なにわ人生道】笑顔のない世界
世界16歳の時の、1年間のオーストラリア海外武者修行。オージーは、みんなお気楽だった。道ですれ違っても、「グッダイ」「マイト」とか言いながら、みんな笑っていた。約束した時間を守らなくても、「ノープロブレム!」と、軽く受け流された。「おまえがプロブレムだろ!」と、イラっとしたこともあったが、笑顔で言われると、笑顔で返さざるをえなくなった。学校では、日本人が珍しかったせいか、色々絡まれた。「ユー、カラレ?」と言われ、なんのことかと思いきや、「お前は空手をやるのか?」という質問だった。「自分はプロレスリングが好きだ!」と返したものの、まったく噛み合わなかった。「ウエンズダイ(水曜日)」「ワッツザタイム(今何時?)」と言われ、日常会話から戸惑った。日本の中学校の英語にはなかった世界がそこにあった。ここで暮らしていると、小さなことはどうでもよくなった。「楽しければいいじゃん!」「みんな笑ってるのが一番!」と思うようになった。1年後、日本に帰って、日吉の高校(男子校)に通うことになった。最初に驚いたのは、駅から下りると、学校までの長い並木道。真っ黒な学ラン男たちが、無言で歩いていた。1クラス50名×18クラス。3学年なので2700人が、同じ時間帯に一斉に校舎に吸い込まれていった。まるで軍隊の行進のようだった。そこには笑顔が全くなかった。中学までは私服で共学。当時、楽しそうだった友達たちも、なぜか暗くなっていた。お気楽なオーストラリアのハイスクールと比べると、同じ高校生とは思えなかった。「自分は日本の高校でやっていけるのか?」そのあまりのギャップに不安になった。
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