【ハッスル運動会⑫】いざ、出撃!!
いよいよ運動会当日。本番開始前、幼稚園で、Aさんと小力登場のタイミングと台詞の掛け合いの、最終チェックを行った。
「台詞はアドリブでもいいので、とにかく思い切っていきましょう!」ふたりで気持ちを高めあった。
そして本番スタート。今年で3回目ということで、 午前の締めの「ハッスルポーズ」も滞りなく行われた。 この幼稚園に「ハッスル」は、すっかり定着していた。
いよいよ午後のオープニングコントの開始10分前。 自ら描いた台本どおり、私はひとり、ボウケンジャー の着ぐるみに身を包んだ。真っ赤な全身タイツに覆面。 つぎに白い手袋を装着。家にあった娘のプラスチックの 剣(つるぎ)を手に、鏡の中を覗きこむと、そこには 別人が立っていた。自分自身で吹き出しそうになるのを 必死にこらえ、私は「出撃の時」を静かに待った。 会場では打合せどおり、司会代行を託したお父さんが、
「みなさん。そろそろ午後の競技が始まります。 元の席について下さい!」場を静めてくれていた。
「これから、スペシャルゲストが登場しますよ。 さ~いったい誰かな!?」
お約束通り、ちびっこ達をあおってくれていた。そして、 少し引っ張ったところで、場内に「ボウケンジャー」の テーマが、大音響で流れ出した。
「あっ!ボウケンジャーだ!」ちびっこたちの叫ぶ声が」 聞こえた。それに合わせた、大合唱が耳にはいってきた。
「よし!出撃だ!」私は剣を天高く振りかざし、会場内 に突撃した。あっという間に取り囲まれ、もみくちゃに された。もっていた剣は悪ガキたちに奪われた。 予想以上のリアクションに戸惑いながらも、必死に 「ボウケンジャー」を演じ続けた。 マスクごしに、心の底から喜んでいるちびっこたちの 笑顔を実感した。「よし、もらった!」と思いながら、 司会代行のお父さんからマイクを受け取り、
「では、これから午後の部をスタートします!」
ボーケンジャーは、高らかに宣言した。
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