【ハッスル運動会⑪】決戦の前日
「きゃ~、みんな助けて💦」
「悪役小力」に拉致され、悲鳴を上げる青柳先生。 運動会のショートコントの台本はまだまだつづく。
「なんで青柳先生を捕まえたんだ!先生を返しなさい」 マイクで絶叫する司会の私に、小力は丁寧な言葉遣いで 悪役ぶりを発揮する。
「おまえたち、午前中の競技ではハッスルが全然足りて なかった。午後はもっとハッスルしないと、青柳先生は 返しませんよ!」
「小力さん、キレてるんですか?」
ボウケンジャーのツッコミに、
「キレてないすよ!」 とボケながらも、
小力はある提案を持ちかけてくる。
「午後の最初のスプーンリレーで、お父さんチームに 先生チームが勝ったら、青柳先生を返してあげます。 先生たちが勝つように、みんな元気良く応援するんだよ」
小力の提案に対し、ボウケンジャーの私は、
「よし。わかった!みんな、大きな声で応援しようね」 ちびっこたちに煽りをいれる。当日、こどもたちが、 先生チームを大声で応援したのはいうまでもなかった。 完成したシナリオを何度も読み返し、流れるような ストーリー展開に、我ながら手ごたえを感じた。 そして運動会の前日、Aさんには小力の衣装と台本を 手渡した。彼は、台詞の多さに一瞬びびっていたが、
「わかりました。さっそく家で練習します!」
と快諾してくれた。青柳先生には、
「悲劇のヒロインを演じて下さい。台詞は1つですから」と、全力で口説いた。先生は「えっ💦」と、一瞬絶句 していたものの、私の熱意に負けたのか、全面的な協力 を約束してくれた。血のにじむような準備と根回し。 あとは翌日の運動会本番を待つのみだった。だが、私が ボウケンジャーに紛することは、娘たちも嫁も知る由はなかった。
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