【なにわ営業道】結婚7年目の危機
みーちゅーの小学校入学を控えた2003年3月。
「関西異動」の辞令を言い渡された。
”突然の転勤”それも何の地縁もない「関西」。
転勤を告げる際の嫁のリアクションが怖かった。
さらに言うと、辞令が出たのは水曜日。
その週末には「プライド(格闘技)」の
試合観戦を控えていた。
「関西転勤」の衝撃事実を告げた場合 、
「それどころじゃないでしょう!
あなた本当に行くの!?」
という最悪の事態が想定できた。
「伝えるのは、プライド観戦後の日曜にしよう!」
私は心の中で、「運命の告白」の先送りを決めた。
「和田野。奥さん大丈夫だったか?」
翌日、会社で部長が気を使って尋ねてくれた。
「いや。わけあって日曜日までには伝えます。」
部長には、とりあえずそう答えておいた。
重苦しい日々がしばらく続いた。
何も悪いことをしていないのに、隠し事をしている
ようで嫁の顔をまともに見れなかった。
そして日曜日のプライド。「男たちの闘い」は、
いつもどおりエキサイティングであった。
普段なら翌日の仕事へ熱いエネルギーを注入される
のだが、この日ばかりは完全燃焼しきれなかった。
しかもエース桜庭が、まさかのKO負け。
会場全体になんとなく落胆の雰囲気が充満した。
そんな空気も相まって、試合終了後、私と嫁は、
はずまない足取りで帰路についた。
当初は、横浜アリーナからの帰りの電車の中で
告白しようと考えていたのだが、
「桜庭もうダメかなあ?」という 嫁からの質問に
答えているうちに、タイミングを 逸してしまった。
自宅に帰り、娘たちにパジャマを着せ、
寝付かせたのは深夜であった。
「私たちももう寝ましょう!」
何も知らない嫁は、そそくさと寝室に向かった。
「まずいなあ。いつ言おう。。。」 と思いながら、
私も後を追ってベッドに横になった。
嫁は私に背を向けて寝ていた。
「今言わないと、あしたも帰りが遅いし。。。」
「部長にも報告できないし。。。。」
「やっぱりいま言うしかないなあ。。。。」
あれこれ考えた結果、思い切って告白を決意した。
「ちょっと話があるんだけど。。。」
「どうしたの?」
嫁は、私に背を向けたままであった。
「4月から大阪に転勤になった!」
一瞬、時間が止まった。
嫁はしばらく動かなくなった。
「本当なの?」
こちらを振り返ったとき、嫁はすすり泣いていた。
「こんなこと、嘘で言わないよ💦」
短い会話がなされた。
「何でうちなのよ!?」
それは私にもわからなかった。
「みおちゃんの小学校はどうするの?」
「これから考えよう。」 そう答えるしかなかった。
今回ばかりは、嫁がどんな反応を示すかわからず、
とりあえず事実を伝え、現実を理解してもらうしか
なかった。しばらくの沈黙のうち、
「わたしたちはどうすればいいの?」
嫁が重い口を開いた。
「一緒に関西に来るか、単身赴任でオレだけ行くか
どっちがいいかよく考えて結論を出そう。」
それだけ答えて、その晩は眠りについた。
(つづく)
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