【なにわ営業道】まだ見ぬ強豪の恐怖

私が「関西人」を過剰に警戒していたには
わけがある。入社して5年間。会社のアメフト
チームに所属し、アメフト専属のスポーツ寮で、
社会人生活をスタートしていた。
当時はバブル採用で、会社の同期入社は770人。
そのうちアメフト同期約20名。そして寮にいた
「東京人」は、私を含めわずか4名。あとは
全員、関西出身というすごい構成だったのだ。
彼らの「おもろいこと」に対してのこだわりは
尋常ではなかった。実家から「吉本新喜劇の
録画ビデオ」を取り寄せ、部屋にこもりきりで
ずっとそれを見ていた男もいた。彼いわく
「これ見んと、笑いの感覚が鈍るんや」と。
ふたり以上集まると、ボケたりつっこんだり。
お笑い芸人のような会話が、日々あちこちで
飛び交っていた。ちょっとでも会話に気を抜くと
「東京人の話はホンマおもろないわ!」と非難
される。世間話ですら、「オチはどこや!」と
言われ、気を抜けなかった。
「バブル入社」&「社会人東京デビュー」という
こともあり、「関西人」は仕事も遊びも勢いが
違った。 全盛期の「ジュリアナ東京」に通い
大暴れしたり、合コンざんまいの男もいた。
その中でも、チームの飲み会を仕切り、いつも
場を盛り上げる、D志社出身のKという男がいた。
「宴会はKに仕切らせとけば間違いない!」と
いうぐらい、チーム内でも高い評価を得ていた
男である。
ある日、同期の結婚披露宴で、衝撃的な光景を
目の当たりにした。たまたま座ったテーブルが
D志社アメフトOBが集まっている席だった。
そして、ここだけ強烈に盛り上がっていた。
「D志社のノリは凄いよなあ!うちのKもいつも
宴会仕切ってるし。。。」
自分が発言した瞬間、それを聞いていたD志社
軍団 が一斉にツッコンできた。
「えっ!シーガルズはKが仕切っとんの!?
Kはうちのチームで一番おもろなかったやん!」
みんなが一斉にKの方を見ると、彼はうつむいて
バツの悪そうな表情を浮かべていた。
「関西人」の底知れぬレベルの高さに唖然とした
瞬間であった。関西で仕事をするにあたって、
私は、本場にいるだろう「まだ見ぬ強豪(リアル
関西人)」を恐れていたのである。 (つづく)
※写真は、リクルートのアメフト同期。お世辞
にも柄が良いとは言えない

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