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【なにわ営業道】商談は真剣勝負

4月に入り、関西に赴任。
いよいよ前任者(以下「Yさん」)との引継ぎで、
取引先の不動産会社を回ることとなった。
最初に行ったのは「京阪」という電鉄会社である。
東京でもそうだが、電鉄会社が、大規模な住宅地を
開発していた。小学生の時、野球少年だった私は、
「阪神」「阪急」「近鉄」「南海」には馴染みが
あったが、「京阪(けいはん)」という名前は
知らなかった。それはともかく、席に通された私は
早くも臨戦態勢となった。名刺交換をし、
「東京から来ました和田野といいます。」
戦国武将のように名乗りをあげた。
相手は「東京人?」という感じで怪訝そうな表情
を浮かべたのを自分は見逃さなかった。しかし
その方は、なんとなく品もあり、お公家さんの
ような感じだった。そして、Yさんとお客さんとの
やりとりがはじまった。私は全精力を、2人の
会話に傾け、集中した。
「お客さんはいつボケるんだろう。それに対し、
Yさんはどうやってつっこむんだろう!」
東京で仕事をした時にはなかった、もの凄い緊張感
である。しかし私の期待と緊張とは裏腹に会話は
淡々とすすんだ。えげつない価格交渉もなかった。
商談が終わり、会社を出た直後、私は尋ねた。
「お客さん、意外にボケないですね。」
Yさんは不思議そうに、
「はあ~?いつもこんなもんですよ。」
と素っ気なかった。
「関西人は、もっとボケまくりかと思ってたん
ですけど。。。」
「そんな、みんながみんなボケませんよ💦」  
Yさんは私の仮説をあっさりと否定した。
しかし、その日私は行く先々の訪問先で身構えた。
いつボケられてもいいように。。。
だがYさんの言うとおり、どのお客さんも全くと
言っていいほどボケなかった。
「で、なんぼやねん。」「もっと、まけろや!」
切った、張ったのえげつないやりとりもなかった。
みんさんごく普通の大人の対応であった。
私は期待が大きかっただけに物足りなさを感じた。
                (つづく)

                   

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